【トヨタ】ハイエース(初代H10型)
世界で愛されている日本車の1つ、ハイエース。実用性に優れた荷室と、100万kmもの走行にも耐えられるという耐久性など、様々な用途で重宝されています。
トラックが商用車の基本だった時代から、ワンボックス型を主流に変えたハイエースは、初代モデルの頃には既に世界各国で圧倒的な人気を誇るモデルとなりました。
【トヨタ・ハイエース(初代H10型)の歴史】
荷物を運搬するためのクルマはそれまでトラックが主流で、ワンボックス型のバンの歴史は1950年代後半から始まりました。
1957年に、1.5t積級の日産・キャブオール(初代C40/140型)にライトバンがラインナップされ、1958年にプリンス・クリッパー(初代AQTI-1型)、1959年にいすゞ・エルフ(初代TL221/251/351/TLD20/21/TLG20/21型)など、マイクロバス仕様やライトバン仕様など、ワンボックス型の走りとも言えるモデルがデビューしていました。しかしこれらは、トラックをベースとした派生モデル。荷室の床面が高くなってしまう傾向にあり、見た目ほどの積載容積を確保できていませんでした。
1966年にデビューしたマツダ・ボンゴ(初代FSA型)は、小柄なボディサイズながら、RRレイアウトを採用して荷室の床面を下げることに成功し、大ヒット。このクラスのイメージリーダーとなりました。
ハイエースは、メンバーにボディを直接溶接するモノコックボディを採用。これによって、荷室の床面を圧倒的に低くすることができ、荷物の積み下ろしが格段に楽になり、大きな積載容量も確保することができました。バン(3人乗り)の荷室寸法は、長さ2670mm×幅1405mm×高さ1315mmを誇り、最大積載量は850kgを実現。
また、前輪独立懸架の採用によって、乗用車に近い乗り心地を実現しており、キャブオーバーの運転姿勢に慣れない人にも抵抗がないように設計されました。
1967年2月にトラックのみでデビュー。エンジンにはコロナと同じ「3P型(直列4気筒OHV・1345cc)」を搭載。コロナの70psに対して、トルク重視にリチューンされて、65psでした。ボディサイズは全長4310mm×全幅1690mm×全高1900mmで、最大積載量は1t。キャブオーバーのシンプルなボディスタイルに、低い位置に配置された丸型4灯式ヘッドランプなど、それまでのトヨエースと比較して、モダンな印象を与えるものでした。
後に追加されたものも含めると、標準荷台の他にフラットデッキやダブルキャブ、パネルバン、シャッターバン、オープンバン、保冷車など、バリエーションも豊富でした。
1967年10月には、ワンボックスボディのワゴンモデルを追加しました。エンジンは70psを発揮する「2R型(直列4気筒OHV・1490cc)」を搭載。トラックと同じ全長4310mmですが、ホイールベースは50mm伸ばされ、9人乗車が可能でした。リアドアはスライドドアではなく、ヒンジドアを採用。後席を倒せば荷室の拡大も可能なほか、2列目にはフルリクライニングシートも採用されました。
そして1968年4月に、主力モデルとなるデリバリーバンを追加。6人乗りの500kg積と、3人乗りの850kg積の2種がラインナップされ、エンジンはトラックと共通の3P型を搭載。ワゴンとは異なり、リアドアはスライドドアを採用しました。また、バックドアは跳ね上げドアとあおりを組み合わせた上下2分割式でした。
1969年2月には、2ナンバー登録となるマイクロバス「コミューター」を発売。ワゴンをベースに4列シートとした12人乗り仕様と、リアオーバーハングとホイールベースを延長した15人乗り仕様をラインナップ。15人乗りは全長4990mm×全幅1690mm×全高1905mm。エンジンは、12人乗りには3P型が、15人乗りには2R型が搭載されました。
1971年2月にマイナーチェンジを実施し、フロントマスクのデザインを変更したほか、ワンボックスでは独立していたバックランプをリアコンビネーションランプを一体化としました。
また、1.5Lエンジンは「12R-J型(直列4気筒OHV・1587cc)」に変更され、ワゴンにも3P型搭載車を追加しました。
同年4月、コミューターの15人乗りをベースとした「トヨタ・救急車」を発売。それまでのクラウンがベースの救急車より格段に室内が広く重宝されました。エンジンは、より高出力な「5R型(直列4気筒OHV・1994cc)」が搭載され、98psを発揮しました。これ以降、現代に至るまでトヨタの救急車はハイエースがベースとなっています。
11月には、コミューターと同じホイールベースのロングバンを追加しました。これがハイエース初の1ナンバー登録となりました。
1972年10月には再度マイナーチェンジが行われ、フロントの意匠変更を実施し、バンには右側にもスライドドアを装備した5ドア車を新たにラインナップしました。
1975年10月、昭和50年排ガス規制に適合するため、ワゴンは廃止。さらに1.3L車も廃止され、代わりに「16R-J型(直列4気筒SOHC・1808cc)」を追加しました。
また、バンの前後ドア間を380mmストレッチして全長4690mmとした新しいロングバンを追加し、従来のロングバンは「スーパーロングバン」と名称を変更しました。
そして1977年2月、2代目モデルが発表されフルモデルチェンジ。最大のライバルとなる日産・キャラバン(初代E20型)が1973年にデビューしており、旧態化が進んでいた末のモデルチェンジとなりました。
キャラバン以外にもその後、マツダ・ボンゴのホイールベースと全長を延長したボンゴブローニィや、三菱・デリカスペースギアの商用バン仕様であるデリカカーゴなど、ライバル車も登場しましたが、ハイエースのシェアやブランド力は揺るがず、現代に至っています。
ハイエースのパッケージングの良さは、積載性能や使い勝手が重宝され、運送業や宅配業のみならず、様々な業種の社有車としても多く使用されているほか、ジャンボタクシーや送迎バス、路線バスなどの旅客用途、救急車や介護タクシー、福祉車両などの医療・福祉用途などに用いられてきました。さらには、キャンピングカーのベース車両や競技用二輪車の輸送など、個人ユーザーも含めて多種多様な用途に使われています。
パッケージングに加えて、耐久性の良さも評価され、新興国や途上国においても需要が高く、世界中で重宝される日本車の1台となりました。
【諸元】
全長×全幅×全高 | 4305/4310mm×1690mm×1890mm(デリバリーバン) |
4690mm×1690mm×1900mm(ロングバン) | |
4990mm×1690mm×1905mm(スーパーロングバン) | |
4310mm×1690mm×1880mm(ワゴン) | |
4310mm×1690mm×1905mm(コミューター12人乗り) | |
4990mm×1690mm×1905mm(コミューター15人乗り) | |
4310mm×1690mm×1900mm(トラック) | |
ホイールベース | 2300mm(トラック) |
2350mm(デリバリーバン/ワゴン/コミューター12人乗り) | |
2650mm(スーパーロングバン/コミューター15人乗り) | |
2720mm(ロングバン) | |
乗車定員 | 3名(デリバリーバン/トラック) |
6名(デリバリーバン/ロングバン/トラックダブルキャブ) | |
9名(ロングバン/スーパーロングバン/ワゴン) | |
12名(コミューター12人乗り) | |
15名(コミューター15人乗り) | |
エンジン | 3P型 直列4気筒OHV 1345cc(65ps/5000rpm) |
2R型 直列4気筒OHV 1490cc(70ps/5000rpm) | |
12R-J型 直列4気筒OHV 1587cc(80ps/5200rpm) | |
16R-J型 直列4気筒SOHC 1808cc(95ps/5400rpm) | |
5R型 直列4気筒OHV 1994cc(98ps/5000rpm)(救急車) | |
駆動方式 | FR |
トランスミッション | 4MT |
タイヤサイズ | 6.00-13 6P/6.00-13 8P(~1975.10) |
6.00-14 6P/6.00-14 8P(1975.10~) |