【マツダ】ユーノス・ロードスター(初代NA型)

1989年にデビューしたユーノス・ロードスターは、1950年代~1960年代のブリティッシュライトウェイトスポーツを彷彿とさせ、国内のみならず北米でも大ヒットを記録しました。

その後海外メーカーまでもが影響を受けて軽量クラスのオープンカーを開発し、消滅しかけていた市場は活性化することになりました。

 

 

 


ユーノス・ロードスター(初代NA型)の歴史】

 

 

1980年代後半のライトウェイトスポーツは、全長4.2m程度のクーペボディに1.6Lエンジンを搭載して車両重量が1.0t程度の、トヨタ・カローラレビン/スプリンタートレノ(E90型)、日産・サニーRZ-1(B12型)を筆頭に、全長3.8mの小柄なファストバッククーペが人気を博していたホンダ・CR-X(2代目EF6-8型)、そしてロードスターと最も車格が近かったのはトヨタMR2(初代W10型)。
MR2は日本の市販車では初のミッドシップレイアウトで話題となった2シータークーペで、Tバールーフ仕様やスーパーチャージャー搭載車が魅力でしたが、販売実績は今一つ。2シーターという実用性の乏しさが、販売の足かせになっていました。

ロードスターの開発の発端は、北米。かつてのMGのようなライトウェイトスポーツがあれば、との声を元に、北米にあったデザイン拠点内で有志での開発がスタートし、マツダ社内のプレゼンなどを経て、正式な開発ラインに乗った後、世界中のマツダのデザイン3拠点(横浜・北米・欧州)でデザインが練られました。

駆動方式には、往年のブリティッシュライトウェイトに則ってFRを採用しました。背景としては、FFレイアウトのCR-XミッドシップMR2などの事実上のライバル車との差別化とも言われます。
フロントミッドシップとしたことで、前後の重量配分は50:50と理想的な値を実現。スペアタイヤやガソリンタンクは前後軸間に配置して中央に寄せ、バッテリーはトランクに配置するなどで前後バランスを取りました。

搭載されたエンジンは、ファミリア用をベースとした「B6-ZE型(直列4気筒DOHC・1597cc)」で、縦置用に変更し、吸排気系の高効率化やバルブタイミングの高回転化などの改良が施され、120psの最高出力を発揮。
トランスミッションは当初5速MTのみが設定されました(1990年3月に4速AT車が追加)。サスペンションにはマツダ初のダブルウィッシュボーンを前後に採用し、ブレーキは4輪ディスクとしました。

ボディサイズは全長3970mm×全幅1675mm×全高1235mmで、車両重量は940kg。1960年代のブリティッシュライトウェイトスポーツと比べると大型ですが、1980年代後半の水準からすると十分に小型で軽量でした。オープン機構は手動式のソフトトップで、デタッチャブルハードトップをオプション設定。ヘッドライトにはリトラクタブル式を採用して、低いノーズを実現しました。
日本の伝統をモチーフにしたデザインが多用されており、フロントマスクは能面の「小面」、リアコンビネーションランプは江戸時代の両替商が試用した「分銅」、シート表皮は畳の模様など、様々なデザインが用いられました。

1989年5月、北米で「マツダ・MX-5ミアータ」としてデビュー。国内では9月から、当時マツダは5チャネル体制であり、そのうちのユーノス店の第一弾車種として「ユーノス・ロードスター」の名称で販売が開始されました。
順調に好調な売れ行きを見せ、翌年の1990年には世界で9万台以上を販売し、スポーツモデルとしては大ヒットとなりました。

1990年7月には、ナルディ製ウッドステアリング、ウッドシフトノブ、ウッドサイドブレーキを装備した「Vスペシャル」を発売。続いて1992年7月には、ナルディ製本革ステアリング、本革シフトノブ、本革サイドブレーキ、BBS製アルミホイールビルシュタイン製ダンパー、リアスポイラーを装備した「Sスペシャル」も追加されました。

1993年7月にはマイナーチェンジを実施。エンジンは、1.6Lエンジンのパワー不足の声を受けて排気量が拡大され、130psの「BP-ZE型(直列4気筒DOHC・1839cc)」に変更されました。
ブレーキローターの大型化やLSDの変更、ボディの補強などの改良も実施され、40kgの重量増となってしまい、出力やトルクの向上はほぼ相殺されていました。

1995年8月、再度マイナーチェンジが行われ、エンジンのリチューンやファイナルギア比の変更などの改良によって、加速感などの改善を実施しました。内装や装備の変更も行われ、「Mパッケージ」などのグレードも追加。

ユーノスチャネルはマツダの経営戦略見直しによって1996年3月末で廃止されましたが、名称は「ユーノス・ロードスター」のままマツダアンフィニ店で販売されました。

1998年1月、2代目NB型「マツダ・ロードスター」の発売と共に、NA型は販売終了。2000年には生産累計53万1890台を達成し、「世界で最も多く生産された2人乗り小型オープンスポーツカー」としてギネスブックにも認定されるなど、販売な好調。4代目ND型発売後の2016年には累計100万台を達成しています。

ロードスターの成功の受けて、トヨタMR-S(W30型)やホンダ・S2000(AP1/2)などの、小型オープンモデルがデビュー。さらには、1995年にロードスターとほぼ同等サイズでデビューしたMG・MGFやフィアットバルケッタ(183型)、やや大柄ながらメルセデスベンツ・SLK(初代R170型)やBMW・Z3(E36/7型)などのドイツ車まで、小型から中型のオープンモデルが開発されて、市場は活性化することとなり、ロードスターはライトウェイトスポーツ復活の立役者となりました。

 

 

 

【諸元】

 

 

ユーノス・ロードスター(初代NA型)

全長×全幅×全高 3970mm×1675mm×1235mm
ホイールベース 2265mm
乗車定員 2名
エンジン B6-ZE型 直列4気筒DOHC 1597cc(120ps/6500rpm)
BP-ZE型 直列4気筒DOHC 1839cc(130ps/6500rpm)
駆動方式 FR
トランスミッション 4AT/5MT
タイヤサイズ 185/60R14
195/50R15