【トヨタ】プリウス(初代XW10型)

「21世紀に間に合いました」のキャッチコピーと共に、1997年に世界初の量産型ハイブリッドカーとしてデビューしたプリウス

今や販売ランキング上位の常連となったプリウスですが、初代モデルの革新的な技術を振り返ります。

 

 

 


プリウス(初代XW10型)の歴史】

 

 

 

世界中の自動車メーカーが研究していたハイブリッドカー。その歴史は古く、1900年頃まで遡ります。当時はエンジンの出力不足をモーターで補うことが考えられていました。その後は、オイルショックによる燃料不足に対応するために、そして、世界的に加速したクリーンエネルギーと省エネルギーのために、様々なハイブリッドカーが研究・開発されましたが、いずれも試作車止まりであり、量産化した例はありませんでした。

トヨタもかつて、ガスタービン燃料電池、水素燃料などの様々なエネルギー源を探っており、その中で、最終的な結論としてハイブリッドカーに辿り着きました。開発に至っては、他の車種と共通化できる部品はほとんどなく、全てが一からの開発となったと言います。

 
 
 
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小型4ドアセダンとしたボディスタイルのデザインは、カリフォルニア州にあるトヨタのデザインセンター「CALTY」が担当。従来の乗用車とは一線を画す未来的なそのスタイリングは、フロントグリルからボンネットにかけた流線的なデザインが特徴的で、これは空気抵抗を低減し低燃費を実現するためとされました。これによってCd値は0.30と、トップレベルの空力性能を実現。

全長4275mm×全幅1695mm×全高1460mmのボディサイズは、当時のカローラとほぼ同等。当時のセダンとしては高い全高によって着座位置を高くしたことや、ホイールベースを2550mmと長く取ったことによって、室内スペースは当時のマークⅡと遜色ないほど広いものでした。

搭載エンジンは、プリウスのために新開発された58psの「1NZ-FXE型(直列4気筒DOHC・1496cc)」で、これに41psを引き出す交流同期電動機(モーター)「1CM型」を組み合わせています。トルクは、エンジンから10.4kg・m、モーターから31.1kg・mを発揮し、トータルで最大40.5kg・mにも達しました。モーターに使われるバッテリーは、ニッケル水素型を採用し、後部座席とトランクの間に置かれました。

トランスミッションにはCVTを採用し、パワー伝達効率を良さに貢献。
エアコンユニットは上下二層構造とし、換気負荷を低減する内外気二層式を採ったほか、断熱構造ボディやUVカットガラスの採用によって、エアコン効率を高めています。
足回りでは、電動パワステの採用で、従来の油圧式に比べて3%程度の燃費向上を実現。専用の超軽量鍛造アルミホイールの上に、空気抵抗低減のための樹脂製ホイールカバーを装着して低燃費を図ったほか、転がり抵抗の少ない低燃費タイヤも採用。
こうした工夫の結果、10/15モードで28.0km/Lの低燃費を実現(当時の1.5Lクラスの小型セダンの燃費は15~18km/L程度)。CO2排出量も1/2に削減したほか、COやHC、NOXも規制値の約1/10にし、クリーンな排出ガスとしました。

 
 
 
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インテリアも未来的で、当時としては珍しかった大型のセンターメーターが話題に。反射率の極めて低い無反射デジタルメーターを採用しました。5.8インチのマルチインフォメーションディスプレイが配置され、エンジンやモーター、バッテリーの状態やエネルギーの流れ、燃費などが表示できたほか、FM多重放送(通称:見えるラジオ)を含むオーディオ情報なども表示。人間工学に基づいたインパネ出しのコラムシフトや、足踏み式パーキングブレーキの採用によって、左右のウォークスルーを実現しました。

環境への配慮もなされており、リサイクル性に優れた樹脂素材をバンパーやインパネに積極的に採用しています。使用済み車両から再生した高性能防音材を採用したほか、ワイヤーやケーブル被覆、燃料タンクには鉛を全く含まない新材料を使用しました。

カローラが100万円(FF・1.3L廉価グレード)~183万円(4WD・2.0L上級グレード)で販売されていた当時、標準仕様215万円で販売が開始され、決して安いクルマではありませんでした。さらにバッテリーの不具合や経年による交換費用を心配する声も多かったため、年間の販売台数は最大2万台程度に留まりましたが、世界初の量産型ハイブリッドカーとしては十分な販売実績を残したと言えるでしょう。

2000年5月にはマイナーチェンジが実施され、エンジンは76psにパワーアップ。モーターは「2CM型」に変更され、45psにパワーアップしました。これによって燃費も向上し、10/15モード燃費で29.0km/Lとなりました。
また、北米での販売開始に対応するためにバンパー形状が変更され、リアスポイラーを新設定して空力性能の向上を図りました。モノグレードだったグレード構成は、「S」「G」の2グレード体制に。

2001年1月、「S」をベースに、DVDボイスナビゲーションやクルーズコントロールを装備した、特別仕様車「S プレミアム21」を発売しました。

8月には、欧州市場向けにチューンされたサスペンションやリアディスクブレーキ、リアスポイラーなどがセッティングされた「ユーロパッケージ」をオプション設定。

2002年8月には、制動時のエネルギー回収量を増加させ、10/15モード燃費で31.0km/Lを達成しました。

そして2003年9月に販売を終了し、2代目へフルモデルチェンジ。5ドアハッチバックスタイルとなって大型化したボディと、さらに低燃費を実現した新ハイブリッドシステムなどが人気となり大ヒットし、その後も安定した人気と販売実績を記録しながら現在に至っています。

他のメーカーからもハイブリッドカーが続々とデビューを果たし、今や街の中はハイブリッドカーに溢れています。その歴史的な最初の一歩を踏み出したのは、紛れもなく1997年の初代プリウス。日本の技術者たちが生み出した、世界に誇れる歴史の一つではないでしょうか。

 

 

 

【諸元】

 

 


トヨタ・プリウス(初代XW10型)

全長×全幅×全高 4275mm×1695mm×1490mm(前期型)
4310mm×1695mm×1490mm(後期型)
ホイールベース 2550mm
乗車定員 5名
エンジン 1NZ-FXE型 直列4気筒DOHC 1496cc(58ps/4000rpm)(前期型)
1NZ-FXE型 直列4気筒DOHC 1496cc(76ps/5000rpm)(後期型)
モーター 1CM型(41ps/940rpm)(前期型)
2CM型(45ps/1040rpm)(後期型)
駆動方式 FF
トランスミッション CVT
タイヤサイズ 165/65R15