【スズキ】カプチーノ(EA11/21型)
バブル景気によるニューモデル投入の流れに、軽自動車規格の改定が重なり、スズキが本格設計した軽スポーツ、カプチーノ。
同時期にデビューしたホンダ・ビートと共に、平成の「BC戦争」を繰り広げ、現在でもマニアの多い、楽しさが凝縮されたピュアスポーツカーでした。
【カプチーノ(EA11/21型)の歴史】
1980年代後半、軽自動車は高出力化の流れが加速。1987年2月に発売されたスズキ・アルトワークスが64psに達すると、軽自動車の出力自主規制(64ps上限)を行うこととなり、1988年10月にはダイハツ・ミラのターボ車が、1989年1月にモデルチェンジした三菱・ミニカもスポーツグレード「ダンガン」が、自主規制の64psに達しました。スバル・レックスも1988年3月にスーパーチャージャー搭載車を追加しており、当初は55psでしたが、1990年4月には新規格の660ccで64psを達成。価格の安い軽自動車で、ハイパフォーマンスモデルが続々と登場することは、ユーザーにとっても歓迎され、軽自動車ホットハッチブームを起こしました。
一方で、自動車業界全体がバブル景気の後押しを受けて、新モデルを数多くデビューさせていた時代。
そんな中、1990年1月に軽自動車規格が改定され、排気量は550ccから660ccに拡大、ボディサイズも拡大されると、軽自動車も新規格に合わせた新モデルを続々と投入していました。そこで計画されたのが、より高性能な軽ピュアスポーツ。ホンダは1991年5月にビートを、スズキは1991年10月にカプチーノを、デビューさせます。
カプチーノはフロントにエンジンに縦置きし、FRレイアウトを採用。フロントミッドシップを目指し、51:49という理想的な重量配分を実現しました。
アルトワークス用の「F6A型(直列3気筒DOHCターボ・657cc)」を搭載し、自主規制値の64psを発揮。サスペンションには、4輪ダブルウィッシュボーンを採用しており、これは軽自動車では初でした。ブレーキは4輪ディスクで、フロントにはVディスクを採用。ABSやトルセンデフ(LSD)はオプション設定されました。トランスミッションは5MTのみで、AT仕様は当初ありませんでした。
FRとしたことで、ロングノーズ・ショートデッキのスポーツカーらしいスタイルを実現。ルーフは3ピース構成となっており、取り外してトランク内に収納が可能で、ハードトップ、Tトップ、タルガトップ、フルオープンの4通りの形態が楽しめました。
設計においてはコンピューター解析を駆使した検討により、クローズドボディを凌ぐボディ剛性を確保。
その上で、ボンネットやハードトップなどには軽量アルミを採用するなど、軽量化も徹底して行い、ライバルのビートより60kgも軽い、車重700kgを実現しました。
インテリアはシンプルにまとめられ、内装色は黒一色の設定。エアコンやパワーウィンドウなどの実用に必要なものは標準装備でしたが、オーディオはオプション設定でした。
モノグレードでデビューし、145.8万円で発売。当時のアルトが49.9~92.4万円だったことを考えれば、軽自動車としては大変高価でした。
その後、1993年6月、1994年3月、同年9月の3度、専用ボディカラーを採用した特別仕様車「リミテッド」が発売されました。
1995年5月にマイナーチェンジ。オールアルミ化された「K6A型(直列3気筒DOHCターボ・657cc)」へ換装され、出力は自主規制の64psで変わらないものの、最大トルクが8.7kgf・mから10.5kgf・mに向上しました。アルミ化によって前期型よりもさらに10kg軽くなり、車両重量は690kg。
また、マイナーチェンジに合わせ、3AT車も設定。(3AT車は10kg重くなるため、車両重量700kg)
1998年に軽自動車規格が再度改定となる際、スポーツカーの低迷もあって車種再編の対象となり、1997年12月をもって販売終了となりました。7年間での生産台数は約2.6万台でした。
カプチーノやビートの生産終了後の軽スポーツ市場は、2002年にダイハツ・コペンがデビューし、2015年にはホンダがビートの後継モデルとなる軽スポーツをS660として復活させました。
しかし、当時も現代も、2シーター軽スポーツでFRを採用したのはカプチーノだけ。そうしたピュアスポーツカーとしてのポテンシャルが、現在でも多くのファンの心を掴み続ける魅力なのかもしれません。
【諸元】
スズキ・カプチーノ(EA11/21型)
全長×全幅×全高 | 3295mm×1395mm×1185mm |
ホイールベース | 2060mm |
乗車定員 | 2名 |
エンジン | F6A型 直列3気筒DOHC ICターボ 657cc(64ps/6500rpm) |
K6A型 直列3気筒DOHC ICターボ 657cc(64ps/6500rpm) | |
駆動方式 | FR |
トランスミッション | 3AT/5MT |
タイヤサイズ | 165/65R14 |