【いすゞ】117クーペ(PA90型)

かつて、いすゞのフラッグシップモデルとして生産された117クーペは、何と言ってもジウジアーロデザインの美しいボディラインが特徴。初期型は「ハンドメイド」でボディを生産したのは有名な話です。

いすゞが乗用車市場から撤退してしばらく経ちますが、いすゞを語る上では外すことの出来ない「名車」です。

 

 
いすゞ117クーペの歴史】

 

 

 


1960年代、コロナやブルーバードに対抗すべく、ミドルクラスセダンを開発していたいすゞは、1967年にフローリアンを発売します。このフローリアンの開発コードは「117サルーン」で、そのクーペ版としての位置づけだったのが117クーペです。

スタイリングはイタリアのカロッツェリア・ギア社に委託され、チーフデザイナーはかの有名なジョルジェット・ジウジアーロ。その後、ジウジアーロはギア社から独立してイタルデザインを立ち上げ、117クーペの量産指導はイタルデザインが引き継ぎました。

プロトタイプは1966年のジュネーヴモーターショーで発表され、「ギア/いすゞ117スポルト」の名称でお披露目されました。
いすゞはこの117スポルトの製品化を進めますが、その洗練されたデザインを、当時のいすゞのプレス技術で再現することは難しく、ジウジアーロによるデザイン修正を実施し、さらにハンドメイドでボディを生産することを決定。
1968年12月に発売された初期モデルは、非常に高価な172万円となり、生産も30~50台/月と限られることになりました。ハンドメイドで生産されたこの初期モデルは、現在でもプレミア価格となっています。

ボディサイズは全長4310mm×全幅1600mm×全高1310mmの4シーター。先行していた日産・シルビアや、数年後に発売されるトヨタセリカ、三菱・コルトギャランGTOなどと比べても、大きなボディを持っており、後席の居住性も確保されていました。

エンジンは、「G161W型(直列4気筒DOHC・1584cc)」を新規開発。いすゞ初の量産型DOHCエンジンで、後にベレットGTRにも搭載されました。120ps/6400rpmを発揮し、最高速度は190km/h(カタログ値)。

ウッドパネルの7連メーターを配置し、シフトノブやステアリングにもウッドを使用したほか、センターコンソールで操作できるクーラーや、ダイヤル操作の三角窓など、内装でも豪華さを演出しました。

1970年11月には、国産車初となるインジェクションを装備した「G161WE型(直列4気筒DOHC・1584cc)」エンジン搭載のグレード「EC」を追加。出力は130ps/6600rpmに向上しました。
同時に発売された廉価版グレード「1800」は、「G180型(直列4気筒SOHC・1817cc)」SUツインキャブ仕様を搭載しました。

1971年11月には、1.8Lエンジンをシングルキャブレターとして、内装にウッドパネルを使用しない等の、さらなる廉価版「1800N」を発売しました。

1973年にマイナーチェンジを受け、中期モデルとなります。GMとの業務提携もあり、機械によるプレス成型の目途が立ったことで、量産が可能となり、価格も引き下げられました。
前後バンパーやフロントグリルのデザインが変更されたほか、リアコンビネーションランプの大型化、リアナンバープレート位置の変更、フェンダーミラーのデザイン変更などの外観上の変更がなされました。
内装でも、最上位グレード「XE」以外はビニールレザーシートとなり、シフトノブとステアリング素材をウレタンに変更、センターコンソールのデザイン変更、XE以外はメーターパネルを金属製に変更するなど、量産化に合わせた装備等のコストダウンが行われました。

エンジンは、G180型シリーズの1.8Lに統一され、「XE」はインジェクション仕様のDOHCで140ps/6400rpm、「XG」はSUツインキャブ仕様のDOHCで125ps/6400rpm、「XC」はSUツインキャブ仕様のSOHCで115ps/5800rpm、「XT」はシングルキャブ仕様のSOHCで100ps/5400rpmと、グレード毎に異なる仕様となっていました。

1975年には、排出ガス規制に対応するため、XEは130ps/6400rpmに出力抑制を余儀なくされ、XCはツインキャブからインジェクションへ仕様を変更、XTは105ps/5400rpmに若干出力が向上した一方、規制への適合が困難だったXGはカタログ落ちすることとなりました。

1977年に再度マイナーチェンジが行われ、後期型となります。ヘッドランプの丸型4灯から角形4灯への変更や、バンパー周りのデザインも変更された他、プラスチック製の内装パーツを多用するなどして更なるコストダウンが図られました。また、カタログ落ちしたXGが、リアディスクブレーキやLSDを装備する、スポーティグレードとして復活しました。

1978年11月には、排出ガス規制による出力低下を補うため、G200型エンジンシリーズを搭載した「スターシリーズ」を追加。インジェクション仕様のDOHCは135ps/6200rpm、SOHCは120ps/5800rpm、シングルキャブ仕様のSOHCは115ps/5600rpmへと出力が向上しました。

1979年12月、ジウジアーロが内外装をカスタムした新グレード、「ジウジアーロ・カスタム」を追加しました。
同時に、73ps/4300rpmを発揮する「C223型直列4気筒OHVディーゼル・2230cc)」を搭載した「XD」「XD-L」を追加。

この頃になると、ライバルも多様化しており、セリカは1977年に2代目へモデルチェンジして同クラスとなり、1978年にはホンダ・プレリュードやマツダRX-7が発売され、1979年には3代目シルビア/初代ガゼールが登場していました。既に発売から10年以上が経過していた117クーペの販売台数は落ち始め、後継車であるピアッツァを1981年に発売したことで、生産終了となりました。

約12年で生産されたのは約85,000台と決して多くはありませんが、今でも人気が高く、愛好家も多いことから、多くの個体が現存し、維持されています。
既にいすゞが乗用車市場から撤退して久しいですが、長年に渡りいすゞのフラッグシップを担った117クーペは、いすゞを語る上では外すことの出来ない、大きなモデルと言えるでしょう。

 

【諸元】

 

 

 

いすゞ117クーペ(PA90型)

全長×全幅×全高 4310mm×1600mm×1310mm
ホイールベース 2500mm
乗車定員 4名
エンジン G161W型 直列4気筒DOHC 1584cc(120ps/6400rpm)
G161WE型 直列4気筒DOHC 1584cc(130ps/6600rpm)
G180型 直列4気筒SOHC 1817cc(100ps/5400rpm)
G180型 直列4気筒SOHC 1817cc(105ps/5400rpm)
G180型 直列4気筒SOHC 1817cc(115ps/5800rpm)
G180型 直列4気筒SOHC 1817cc(125ps/6400rpm)
G180型 直列4気筒DOHC 1817cc(130ps/6400rpm)
G180型 直列4気筒DOHC 1817cc(140ps/6400rpm)
G200型 直列4気筒SOHC 1949cc(115ps/5600rpm)
G200型 直列4気筒SOHC 1949cc(120ps/5800rpm)
G200型 直列4気筒DOHC 1949cc(135ps/6200rpm)
C223型 直列4気筒OHV ディーゼル 2238cc(73ps/4300rpm)
駆動方式 FR
トランスミッション 3AT/5MT/4MT
タイヤサイズ 6.45H-13 4P
165SR13
165/70SR13
185HR13
185/70HR13
6.45H-14 4P